日本小児保健協会 お役立ちガイドライン
https://www.jschild.or.jp/guideline/
(以下ウエブサイトからの引用)
3~5か月児健診、9~10か月児健診、1歳6か月児健診、3歳児健診、5歳児健診のための「健やか子育てガイド」(令和5年度)
平成30(2018)年に成立した成育基本法に基づいて厚生労働省から発出された「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」で示されている方針に沿い、乳幼児健康診査をより充実したものとすることを目指し、「健やか子育てガイド」を作成したしました。問診票とそれに対応した子育てガイドの2つで構成しています。また、集団健診、個別健診、保育所や幼稚園での健診など多様な場面で用いることを想定し、問診票で気になる項目について、それに対応した子育てガイドの該当箇所を見ながら、標準的な指導ができるように例示しました。(令和5年度子ども家庭科学研究費補助金等 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「身体的・精神的・社会的(biopsychosocial)に乳幼児・学童・思春期の健やかな成長・発達をポピュレーショアプローチで切れ目なく支援するための社会実装化研究(研究代表者:永光信一郎)、「個別の乳幼児健診における保健指導の充実に関する研究」(分担研究者:小枝達也)」
https://www.jschild.or.jp/wp-content/uploads/2024/04/%E5%81%A5%E3%82%84%E3%81%8B%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89.pdf
(以下ウエブサイトからの引用)
3-5か月健診
健やか子育てガイドの問診項目で得られた回答をもとに、Ⅰ.メディア使用と子どもの生活習慣には関連があ
る、Ⅱ.メディア使用と育児困難感には関連がある、Ⅲ.子どもの生活リズムの不規則さは親のイライラや怒り
を誘発し、育児困難感を増大させる、という3つの仮説を立てて検証した結果、仮説Ⅰ、Ⅱは成立するという証
拠は得られず、仮説Ⅲにおいて子どもの睡眠での問題がある場合にのみ、保護者の育児支援希求が大きくなるこ
とが検証された。
4~5か月児の健診での保健指導において、メディア使用について注意喚起は重要な内容である。この月齢の
乳児で、すでにいつもDVD、動画を見ることがあるという回答が 12.5%に上っており、ときどきあるという回
答 47.5%と合わせると、じつに 60%もの乳児がメディアに日常的に接しているという結果であった。メディア
の利用が生活に浸透していることをうかがわせる結果と思われる。
また、100%の保護者が児に語りかけ、90%を超える保護者が歌を歌ってやり、70%を超える保護者が絵本を読
んでやっているという保育状況を見ると、メディアに子守りをさせているという状況とは考えにくい。多変量ロ
ジスティック回帰分析でも、保護者のメディア使用状況と絵本を読むという行動に、明らかな関連はなかった。
子ども自身がDVD などのメディア利用が、子どもの生活習慣や保護者の情緒の安定さに悪影響を及ぼしてい
るという根拠は得られていないため、指導にあたっては慎重さが求められる。
多変量ロジスティック回帰分析で唯一、関連があるという結果だったのは睡眠の困難さと育児支援希求であっ
た。4~5か月児であっても寝つきの悪さや夜泣きなどの睡眠上の問題は、保護者の育児支援を求める気持ちは
大きい可能性があり、育児に余裕が持てるような具体的な手立てを一緒に考えるなどの丁寧な対応が求められる。
9-10か月健診
結果の解釈とまとめ
健やか子育て問診票の項目で得られた回答をもとに、Ⅰ.メディア使用と子どもの生活習慣には関連がある、
Ⅱ.メディア使用と育児困難感には関連がある、Ⅲ.子どもの睡眠上の課題や発達上の課題は、親のイライラや怒
りを誘発し、育児困難感を増大させる、という3つの仮説を立てて検証した結果、仮説Ⅰ、Ⅱは成立するという
証拠は得られず、仮説Ⅲにおいて子どもの睡眠での問題がある場合には、親のイライラが高じることや、不機嫌
さがあると親の育児支援希求が大きくなるという結果であった。
9~10 か月児の健診での保健指導において、メディア使用について注意喚起は重要な内容である。テレビ・
DVD・動画を観るか?に対して、いつも DVD、動画を見ることがあるという回答が 23.9 %に上っており、と
きどきあるという回答 56.0 %と合わせると、およそ 80%もの乳児がメディアに日常的に接しているという結果
であり、4~5か月児よりも増加していた。メディアの利用が生活に浸透していることをうかがわせる結果と思
われる。
9~10 か月児の健診での保健指導において、メディア使用について注意喚起は重要な内容であるが、子どもの
生活習慣や保護者の情緒の安定さに悪影響を及ぼしているという根拠は得られていないため、指導にあたっては
慎重さが求められる。
一方で、30%以上の保護者が睡眠上の困り感を抱えていた。これは4~5か月児よりも増加しており、育児に
とって夜の寝かしつけがいかに大変であるかをうかがわせる結果であった。寝つきの悪さや夜泣きなどの睡眠上
の問題は、親のイライラと関係しているし、程度の強い不機嫌が見られる子どもでは親の育児支援を求める気持
ちは大きい可能性があり、育児に余裕が持てるような具体的な手立てを一緒に考えるなどの丁寧な対応が求めら
れる。
1歳6か月健診
結果の解釈とまとめ
1歳6か月児では、DVD や動画をいつも観る、ときどき観るの両方を合わせると 95%を超えており、日常生
活の一部になっていることがうかがわれる。また、寝る前までいつもで動画を視聴している幼児の割合が 10.2%、
ときどき見ている割合が 31.6%であった。多変量ロジスティック回帰分析で、就寝直前までいつも動画を見てい
る子どもでは、まったく観ない子よりもオッズ比 2.94 で、有意に睡眠時間は短いという結果が得られた。
寝る前には脳からメラトニンという睡眠を誘ってくれるホルモンが分泌され、このホルモンによって自然な睡
眠が誘導される。寝る直前まで動画を見ていると眼に光が入って、光によってメラトニンの分泌が抑制され、そ
の結果、睡眠時間が短くなることが想定される。保健指導においては留意すべき事項である。
また、就寝前までの動画視聴や食事中の TV や動画視聴と親のイライラや怒鳴るといった行動には有意な関連
があり、オッズ比も有意に高かった。一方で昼間の動画視聴とは関連がなかったことから、メディアの使い方に
留意が必要であると考えられる。
親のイライラや育児支援希求は子どものかんしゃくや乱暴な行動と関連しており、オッズ比も高かったことよ
り、子どものかんしゃくや乱暴な言動があるという心配のある保護者には、子育て支援の場を紹介するなど、十
分な対応が求められる。
3歳児健診
結果の解釈とまとめ
3歳児では、DVD や動画をいつも観る、ときどき観るの両方を合わせると 97%を超えており、ほぼすべての3 歳児
は日常生活の活動の一つとしてメディアを使用していることがうかがわれる。また、寝る前までいつも動画を視聴して
いる幼児の割合が 19.7%、ときどき見ている割合が 49.2%であった。これらの割合は1歳6か月児健診での調査結果
よりも多くなっている。多変量ロジスティック回帰分析では、睡眠時間や夜の中途覚醒と就寝前の動画の視聴とは、有
意な関連は見いだされなかった。その他、食事中のメディア使用もいつも見ている割合が 26.5%と4人に1人が、食事
をしながらTV や動画を見ているという状況であった。多変量ロジスティック回帰分析では、こうしたメディア使用状
況と睡眠上の課題との間に有意な関連があるとは言えなかった。
保護者の精神状態との関連では、就寝直前までの動画視聴は、親が怒鳴ることと関連があったが、それ以外で有意な
関連があるとは言えなかった。一方で、子どもに強いかんしゃくがあったり、子どもに乱暴な言動があることと、親の
イライラやどなるという行動には関連があり、さらに落ち着きがないという発達上の課題も、親のイライラやどなるこ
とと関連があるという結果であったことより、親子の関係性に留意する必要があると考えられる。
5歳児健診
結果の解釈とまとめ
5歳児では、DVD や動画をいつも観る、ときどき観るの両方を合わせると 99%を超えており、ほぼすべての幼
児がメディアを日常的に活用していると考えてよいと思われる。食事をしながらTV や動画を視聴する幼児もい
つもの割合が 27.6%、ときどきの割合が 46.3%と4人中3人がこうした使用状況の中で生活していることが判
明した。寝る前まで動画を視聴する割合もいつも 20.0%、ときどき 45.5%であり、生活習慣の中にメディアの
しようが深く入り込んでいることがうかがえる。
多変量ロジスティック回帰分析の結果より、睡眠上の課題とメディア使用状況との間に有意な関連が認められ
た。とくに就寝直前まで動画を視聴すると睡眠時間が短く、夜中の中途覚醒が多いという結果には留意すべきで
あると考えられた。
寝る前には脳からメラトニンという睡眠を誘ってくれるホルモンがたくさん分泌される。このメラトニンに
よって自然な睡眠へと誘導され朝まで起きない。寝る直前まで動画を見ていると眼に光が入って、光によってメ
ラトニンの分泌が抑制され、その結果、寝つきが悪い、夜中に目が覚めるといったことが起きてくる。
また、子どもの乱暴な行動と親のイライラやどなる行動が関連していること、育児支援希求とも関連している
ことより、保健指導に当たっては、子どもの行動に留意し、その反応としての親子の関係性に留意する必要があ
ると考えられる。