私たちもシンガポールに住む外国人であり、このような非常事態では容易に社会的弱者になり得る。英語での情報収集の困難や、滞在ビザが影響を受けたり、公的な政府からの経済支援が得られないことなど皆さん色々な経験があっただろうと思うが、何よりも、頼りになるローカルの友人がいなかったり、家族と離れて住んでいると精神的な不安が大きくなりがちである。私は娘との再会を喜びつつも、人との接触が制限され先が見えない日々の中、世界中で母国から離れて暮らす人々の不安の大きさはいかばかりだろうと想像していた。
シンガポールでも4月7日から8週間のCircuit Breakerと呼ばれる部分的なロックダウンを経験した。COVID-19の状況が不透明な状況が続き、例えば、仕事や雇用の影響など経済的な不安、離れて暮らす家族の健康問題など他のストレス要因が重なると、人は体調や気分の変化を感じることがある。具体的な症状は、睡眠や食欲、体調の変化、精神的には気分の落ち込みや不安感などである。また、外出も制限された状況で、先の予定が立てられない状況が続く。このような場合、まずは毎日の予定を立てることが役に立つ。生活リズム(着替える、顔を洗う、食事は食卓で家族で一緒に取る、起床就寝時間を決める)・家族での約束事(散歩・買い物に出かける予定などを話し合う)を決めるとよい。月ー金は勉強や仕事に専念し、週末はレストランで料理の配達を頼むなど、メリハリをつけ、先の決まった予定があればカレンダーに書き込むのもいいだろう。
もしあなたが一人暮らしで在宅勤務であれば、社会的つながりを保つことが特に大事になる。ネットでのチャットやビデオでのおしゃべり、電話、SNSなどで、母国の家族や会えない友人と連絡を取り、短時間でもおしゃべりができる時間を持つようにしよう。一人暮らしでアルコールを飲む人は、知らず知らずにアルコールの量が増えていることがある。禁酒日を決める、購入する量を減らすなど対策を立てよう。
家族と同居生活の場合は、人間関係を良好に保つように心がけよう。家族であっても相手に対する心配りを忘れて人間関係が悪化すると、コロナのみならず家の人間関係がストレス要因になってしまう。同居生活を円満にすごすコツの一つはプライバシーの確保である。一人になる時間や、一人になりたいときに一人で過ごせる場所を確保する。特に、小さい子供を持つ母親は24時間育児で自分自身の時間を持つことが難しい。一日の中で一人になれる時間と場所の確保をお勧めしたい。子供が高学年にもなると生活態度や反抗などで衝突することがあるかもしれない。食事中の会話や一緒の時間は楽しく過ごすように心がけよう。